同じ形で意味の違う語の見分け方です。基本の手順は三つ。①直前の語の品詞と活用形(接続)を見る、②その語自身の活用形や、下に続く語を見る、③訳して意味が通るか確かめる。入試でよく問われる「なり・ぬ・ね・に・なむ・る・し・らむ・けれ・な・ば・が・の・と・を」を中心にまとめました。
助動詞・助詞そのものの意味や活用は古典文法一覧にあります。ここでは「同じ形をした別の語」をどう見分けるかだけをまとめています。
「なり」の識別
識別基本| 断定の助動詞「なり」 | 接続:体言・連体形/訳:〜だ・〜である/目印:「にあり」「であり」に置き換えられる |
|---|---|
| 伝聞・推定の助動詞「なり」 | 接続:終止形(ラ変型の語は連体形)/訳:〜ということだ・〜ようだ・〜が聞こえる/目印:音・声・うわさの場面 |
| 形容動詞(ナリ活用)の活用語尾 | 接続:語幹(静か・あはれ・おろか)/訳:〜だ/目印:「いと」を前に付けて意味が通る |
| 動詞「なる」(ラ行四段)の連用形 | 訳:〜になる/目印:「〜になる」と訳せて、下に「て・ぬ・たり・けり」などが続く |
手順は、①直前の語は何か(体言・活用語の何形か)、②音や声の話か、③「〜だ」と訳せるか、の順。終止形と連体形が同じ形の動詞(四段など)に付くときは、形では決まらないので、音・うわさの文脈なら伝聞・推定、それ以外は断定とみる。ラ変は終止形が「あり」、連体形が「ある」で形が違う。「あんなり」「ざんなり」の「ん」は書かれず、「あなり」「ざなり」の形になる。この「ん」が省かれた形(撥音便の無表記)に付く「なり」は、伝聞・推定。
月の都の人なり。
(私は)月の都の人である。
竹取物語
女もしてみむとてするなり。
女(の私)もしてみようと思って、書くのである。
土佐日記
弓の音すなり。
弓の音がするようだ。
今昔物語集
男もすなる日記といふものを、
男が書くという日記というものを、
土佐日記
海賊は夜歩きせざなりと聞きて、
海賊は夜は出歩かないそうだと聞いて、
土佐日記
恐ろしなんどもおろかなり。
恐ろしいなどと言うのも言い足りない。(おろかなり=形容動詞)
平家物語
火桶の火も白き灰がちになりて、
火桶の火も白い灰が多くなって、
枕草子
「ぬ」「ね」の識別
識別基本| 完了の助動詞「ぬ」の終止形「ぬ」・命令形「ね」 | 接続:連用形/訳:〜た・〜てしまった/命令形は〜てしまえ/目印:下に「べし・らむ・めり」など終止形接続の語が来る、または文末 |
|---|---|
| 打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」・已然形「ね」 | 接続:未然形/訳:〜ない/目印:「ぬ」の下に体言、「ね」の下に「ば・ど」、「こそ〜ね」 |
| ナ変動詞(死ぬ・往ぬ)・ナ行下二段動詞(寝ぬ)の活用語尾 | 訳:死ぬ・行ってしまう・寝る/目印:「ぬ」「ね」を除くと動詞にならない |
手順は、①直前の語の活用形を確かめる、②四段活用は未然形(a段)なら打消、連用形(i段)なら完了、③上一段・下二段・カ変・サ変は未然形と連用形が同じ形なので、下に続く語で決める。「ぬ」の下が体言なら打消の連体形、文末か終止形に付く語なら完了。「ね」は、「ね+ば・ど」なら打消の已然形、文末で命令の意味なら完了の命令形。「ぬれ」は完了の已然形(ぬれば)か、打消でなく動詞の一部かを見る。
時知らぬ山は富士の嶺
季節をわきまえない山は富士の嶺である。(知らぬ=未然形+打消)
伊勢物語
翁、竹を取ること久しくなりぬ。
翁が竹を取って暮らすことは、長くなった。(なり=連用形+完了)
竹取物語
知らぬ人
知らない人(打消の連体形)
(例文)
今日は日暮れぬ。
今日は日が暮れてしまった。(完了の終止形)
平家物語(那須与一)
目覚めぬれば幾夜も寝ねず。
目が覚めてしまったので、幾夜も寝ない。(ぬれ=完了の已然形、寝ね=動詞「寝」の未然形)
徒然草
宿世違はば、海に入りね。
運命が思いどおりにならないなら、海に入ってしまえ。(完了の命令形)
源氏物語
いかに仰せらるるやらん、えこそ聞き知らね。
どうおっしゃっているのやら、聞いてわからない。(こそ+打消の已然形)
徒然草
恋ひ死なば恋ひも死ねとや
恋い焦がれて死ぬのなら死ね、というのか。(死ね=ナ変動詞の命令形)
万葉集
「に」の識別
識別基本| 格助詞「に」 | 接続:体言/訳:〜に・〜で・〜へ・〜と/目印:直前が体言で、場所・時・対象などを表す |
|---|---|
| 接続助詞「に」 | 接続:連体形/訳:〜ので・〜のに・〜と・〜ところ/目印:下に文が続き、前後の事柄がつながる |
| 完了の助動詞「ぬ」の連用形 | 接続:連用形/訳:〜た・〜てしまった/目印:下に「き・けり・たり・けむ・けれ」 |
| 断定の助動詞「なり」の連用形 | 接続:体言・連体形/訳:〜で(ある)/目印:下に「あり・侍り・おはす」、または「にや」「にこそ」「にて」 |
| 形容動詞の連用形の活用語尾 | 接続:語幹(静か・あはれ)/訳:〜に・〜く/目印:「いと」を前に付けて意味が通る |
| ナ変動詞(死ぬ・往ぬ)の連用形の活用語尾 | 訳:死に・行ってしまい/目印:「死」「往」の下 |
| 副詞の一部 | げに・すでに・さらに など/訳:まことに・もう・さらに/目印:「に」を除くと単語にならない |
手順は、①直前の語の品詞と活用形を見る、②下に続く語を見る、③「で」「〜た」「〜のに」などに置き換えて訳が通るか確かめる、の順。直前が体言なら格助詞か断定、連用形なら完了、連体形なら接続助詞か断定。断定は、下に「あり」が続く(省略されることもある)ので見分けられる。直前の語が「静か・あはれ」のように状態を表す語幹なら形容動詞、「げ」「すで」のように切り離せなければ副詞の一部。
井筒にかけしまろがたけ
(筒井筒の)井筒と背をくらべた私の背丈
伊勢物語
涙落つとも覚えぬに、
涙が落ちるとも思われないのに、
源氏物語
をさなき人は、寝入りたまひにけり。
幼い人は、寝入ってしまわれたよ。(完了の連用形)
宇治拾遺物語「児のそら寝」
心といふもののなきにやあらむ。
心というものがないのであろうか。(断定の連用形)
徒然草
いま静かに御局にさぶらはん。
そのうちゆっくりと、お部屋に伺いましょう。(静かに=形容動詞の連用形、御局に=格助詞)
枕草子
据ゑなほして往にければ、
据え直して行ってしまったので、(往に=ナ変動詞の連用形)
徒然草
げにいとあはれなりなど聞きながら、
まことにたいそう趣深いなどと聞きながら、(げに=副詞)
枕草子
「なむ」の識別
識別基本| 係助詞「なむ」 | 接続:体言・助詞・活用語の連用形など、いろいろ/訳:訳さない(強意)/目印:抜いても意味が通る。結びは連体形 |
|---|---|
| 終助詞「なむ」 | 接続:未然形/訳:〜てほしい・〜てくれ/目印:文末。他に対する願望 |
| 強意の助動詞「ぬ」の未然形+推量の助動詞「む」 | 接続:連用形/訳:きっと〜だろう・きっと〜しよう・〜するのがよい/目印:直前が連用形 |
| ナ変動詞(死ぬ・往ぬ)の未然形語尾+「む」 | 訳:死のう・行こう/目印:「な」が動詞の一部 |
手順は、①「なむ」の直前の語の活用形を見る、②連用形なら強意+推量、③未然形なら、直前が「死」「往」のナ変動詞でなければ終止助詞、④それ以外(体言・助詞・連体形など)なら係助詞。係助詞の「なむ」は、文末の語が連体形になる(係り結び)ので、確かめるとよい。強意+推量の「む」は、主語が一人称なら意志、二・三人称なら推量が多い。
名をば、さかきの造となむ言ひける。
名を、さかきの造と言った。(なむ=係助詞、結びの「ける」は連体形)
竹取物語
山の端逃げて入れずもあらなむ
山の端が逃げ去って、(月を)入れないでいてほしい。
伊勢物語
盛りにならば、容貌も限りなくよく、髪もいみじく長くなりなむ。
女盛りになったら、顔だちもこの上なくよく、髪もたいそう長くなるにちがいない。
更級日記
し出ださむを待ちて寝ざらむも、わろかりなむと思ひて、
できあがるのを待って寝ないのも、きっと具合が悪いだろうと思って、
宇治拾遺物語「児のそら寝」
早く往なむとて、
早く行こうと思って、(往なむ=ナ変動詞「往ぬ」の未然形+意志の「む」)
土佐日記
ねがはくは花の下にて春死なむ
願うことは、桜の花の下で春に死にたいものだ。
山家集
「る」「れ」の識別
識別基本| 助動詞「る」(受身・尊敬・自発・可能) | 接続:四段・ナ変・ラ変の未然形(a段)/訳:〜れる・〜られる/目印:直前がa段 |
|---|---|
| 完了・存続の助動詞「り」の連体形「る」・已然形「れ」 | 接続:四段の已然形(命令形)・サ変の未然形(e段)/訳:〜た・〜ている/目印:直前がe段 |
| 動詞の活用語尾 | 「まさる」「ののしる」「尋ぬる」「流る」「恐る」など/目印:「る」「れ」を除くと動詞として成り立たない |
手順は、①「る」「れ」を取って、直前の語を見る、②残りがa段で終わる四段・ナ変・ラ変の語なら、助動詞「る」、③e段で終わる四段の語(咲け・思へ)かサ変の「せ」なら、完了・存続の「り」、④取った残りが動詞として成り立たない(「まさ」「ののし」)なら、動詞の一部。「る」の意味(受身・尊敬・自発・可能)は文脈で決める。「り」は「〜ている」(存続)と訳せることが多い。
冬はいかなる所にも住まる。
冬はどんな所にでも住むことができる。(可能)
徒然草
悪しと思へるけしきもなくて、
不快だと思っている様子もなくて、(思へ+存続の「り」)
伊勢物語
ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明けの月ぞ残れる
ほととぎすが鳴いた方角を眺めると、ただ有明の月だけが残っている。
千載集
すくすくと大きになりまさる。
すくすくと大きく成長していく。(まさる=動詞)
竹取物語
犬どもの、出で来て、ののしるも、
犬どもが出て来て、大声でほえるのも、(ののしる=動詞)
土佐日記
「し」の識別
識別基本| 過去の助動詞「き」の連体形「し」 | 接続:連用形(カ変・サ変は特殊な形)/訳:〜た/目印:下に体言、または「こそ」の結びで「しか」 |
|---|---|
| 強意の副助詞「し」 | 接続:体言・助詞・活用語など/訳:訳さない(強意)/目印:抜いても意味が通る。「にし」「しも」「しぞ」 |
| サ変動詞「す」の連用形 | 訳:する/目印:直前が名詞・副詞(田舎わたらひ+し)で、「〜する」と訳せる |
| 形容詞(シク活用)の終止形語尾 | 「うれし」「わびし」/目印:「し」を除くと単語にならない |
手順は、①直前の語が連用形か、②「し」を除いても意味が通るか、③「し」だけで「〜する」と訳せるか、の順。連用形に付いて下に体言が続けば過去の助動詞。助詞や体言の直後なら副助詞か、名詞に付くサ変動詞。「うれ・わび」のように、「し」を除くと単語にならなければ形容詞の語尾。
昔ありし家はまれなり。
昔あった家はまれである。
方丈記
名にし負はば
その名を持っているのならば
伊勢物語
田舎わたらひしける人の子ども、
田舎まわりの行商をしていた人の子どもたちが、
伊勢物語
うれしとは思へども、
うれしいとは思うけれども、
宇治拾遺物語「児のそら寝」
「らむ」の識別
識別| 現在推量の助動詞「らむ」 | 接続:終止形(ラ変型の語は連体形)/訳:〜ているだろう・どうして〜のだろう・〜ような/目印:直前がu段 |
|---|---|
| 完了・存続の助動詞「り」の未然形「ら」+推量・婉曲の助動詞「む」 | 接続:四段の已然形(e段)/訳:〜ている(ような)・〜ているだろう/目印:直前がe段 |
| 動詞・形容詞の活用語尾「ら」+「む」 | 「あらむ」「まからむ」「惜しからむ」/訳:〜だろう・〜(する)ような/目印:「ら」までが一つの語(ラ変・ラ行四段・形容詞のカリ活用) |
手順は、①「らむ」の直前を見る、②u段(終止形)なら現在推量、③e段の四段活用の語なら「り」+「む」、④「ら」の前で語が切れず、「あら」「まから」「惜しから」までで一語なら、活用語尾+「む」。「らむ」の訳は「いま〜ているだろう」「どうして〜のだろう」が基本。
夜半にや君がひとり越ゆらむ
夜中に、あなたは今ごろ一人で越えているのだろうか。
伊勢物語
あはれ知れらむ人に見せばや
情趣を解しているような人に見せたい。
後撰集
夕べには朝あらむことを思ひ、
夕方には翌朝があるようなことを思い、
徒然草
憶良らは今はまからむ
憶良めは、もう退出いたしよう。
万葉集
なにせむにか命も惜しからむ。
どうして命が惜しいことがあろうか。
竹取物語
「けれ」の識別
識別基本| 過去(詠嘆)の助動詞「けり」の已然形 | 接続:連用形/訳:〜た・〜なあ/目印:「ければ」「けれど」「こそ〜けれ」 |
|---|---|
| 形容詞の已然形の活用語尾 | 「をかしけれ」「めでたけれ」/訳:〜(である)/目印:直前が語幹(をかし・めでた)で、「しけれ」「けれ」が一体 |
| 当然・推量の助動詞「べし」の已然形「べけれ」の一部 | 接続:終止形/訳:〜べきだ・〜だろう/目印:「べけれ」の形 |
| 四段動詞の已然形語尾「け」+存続の助動詞「り」の已然形「れ」 | 接続:四段の已然形/訳:〜ている/目印:「咲け+れ」のように、直前の動詞がe段で終わる |
手順は、①「けれ」の直前を見る、②連用形なら「けり」、③形容詞の語幹と見えるなら、形容詞の活用語尾、④「べけれ」の形なら「べし」、⑤四段動詞の語尾「け」+「れ」なら存続の「り」。「け」と「れ」を分けて考えられるかどうかが分かれ目。
芥川といふ川を率て行きければ、
芥川という川のほとりを(女を)連れて行ったところ、
伊勢物語
野分の朝こそをかしけれ。
野分の翌朝はまことに趣がある。(をかしけれ=形容詞の已然形)
徒然草
四十路に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ。
四十歳に足りないくらいで死ぬようなのが、見苦しくなくてよいだろう。
徒然草
咲かざりし花も咲けれど
咲かなかった花も咲いているが
万葉集
「な」の識別
識別基本| 禁止の副詞「な」(〜そ) | 接続:「な+連用形(カ変・サ変は未然形)+そ」/訳:〜するな・どうか〜しないでください/目印:下に終助詞「そ」 |
|---|---|
| 禁止の終助詞「な」 | 接続:終止形(ラ変型の語は連体形)/訳:〜するな/目印:文末 |
| 詠嘆の終助詞「な」 | 接続:文末の語(けり・つなど)/訳:〜なあ・〜ことよ/目印:文末で、感じ入った言い方 |
| 願望の終助詞「な」 | 接続:未然形/訳:〜たい/目印:自分の願望(一人称) |
| 強意の助動詞「ぬ」の未然形「な」 | 接続:連用形/訳:きっと(〜だろう)・〜てしまう/目印:下に「む・まし・なむ・ば」 |
手順は、①「な」が文頭近くで下に「そ」があるか、②文末なら直前の活用形、③下に「む・まし」などが続くか、の順。文末の「な」は、直前が終止形なら禁止か詠嘆、未然形なら願望。禁止か詠嘆かは、相手に呼びかけているか、感じ入っているかで決める。連用形の下に「な」+「む・なむ」が続けば、強意の助動詞「ぬ」。
や、な起こしたてまつりそ。
いや、お起こし申し上げるな。(副詞「な」+終助詞「そ」)
宇治拾遺物語「児のそら寝」
あやまちすな。心して降りよ。
失敗するな。気をつけて降りよ。(禁止の終助詞)
徒然草
花の色は移りにけりな
花の色(私の容色)はすっかりあせてしまったことだなあ。(詠嘆の終助詞)
古今集
帰るさに妹に見せむにわたつみの沖つ白玉拾ひて行かな
帰りがけにあなたに見せようと、海の沖の白玉を拾って行きたい。(願望の終助詞)
万葉集
おしなべて峰も平らになりななむ
どの峰もすっかり平らになってしまってほしい。(なりな=強意の「ぬ」の未然形、なむ=願望の終助詞)
伊勢物語
「ば」「ばや」の識別
識別基本| 接続助詞「ば」(順接仮定条件) | 接続:未然形/訳:〜ならば |
|---|---|
| 接続助詞「ば」(順接確定条件) | 接続:已然形/訳:〜ので・〜と・〜ところ |
| 格助詞「を」+係助詞「は」の濁音化「をば」 | 接続:体言+をば/訳:〜を(強調)/目印:「をば」の形 |
| 願望の終助詞「ばや」 | 接続:未然形/訳:〜たい/目印:文末。自分の願望 |
| 接続助詞「ば」+係助詞「や」 | 接続:未然形・已然形/訳:〜ならば〜か、〜ので〜だろうか/目印:「や」の結びの語が下に続く |
手順は、①「ば」の直前の活用形を見る(未然形なら仮定、已然形なら確定)、②「ばや」のとき、文末で自分の願望なら終助詞、下に「や」の結び(連体形・らむ・けむ など)が続くなら「ば」+「や」。「をば」は、直前が「を」で「〜を」と訳せるなら、係助詞「は」が濁ったもの。
吾を愛しと思はば
私をいとしいと思うならば
古事記
雪降れば冬ごもりせる草も木も
雪が降ると、冬ごもりしている草も木も
古今集
己が装束をば皆召しつ。
自分の装束を、すっかりお取り上げになった。(をば=を+は)
今昔物語集
ちと承らばや。
ちょっとお聞きしたい。(終助詞)
徒然草
思ひつつ寝ればや人の見えつらん
(あの人を)思いながら寝たので、あの人が(夢に)見えたのだろうか。(ば+や)
古今集
心あてに折らばや折らん
もし折るのなら、あて推量で折ってもみようか。(ば+や)
古今集
「が」の識別
識別基本| 格助詞「が」(主格・連体修飾格) | 接続:体言/訳:〜が・〜の/目印:直前が体言 |
|---|---|
| 格助詞「が」(準体言+が) | 接続:連体形/訳:〜のが・〜ものが/目印:直前の連体形の下に「人」「もの」を補って読める |
| 格助詞「が」(同格) | 接続:体言・連体形/訳:〜で(あって)/目印:「Aが、…連体形」で、AとBが同じものを指す |
| 接続助詞「が」 | 接続:連体形/訳:〜が(逆接)・〜と・〜ところ(単純接続)/目印:下に別の話題が続く。体言を補えない |
手順は、①直前が体言なら格助詞、②直前が連体形なら、下に体言を補って読めるか試す、③補えず、前後の主語が変わる(逆接や単純接続でつながる)なら接続助詞、の順。同格の「が」は、「〜が、〜連体形」の形で「〜で」と言い換えられる。
雀の子を犬君が逃がしつる。
雀の子を犬君が逃がしてしまったの。
源氏物語「若紫」
雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるはいとをかし。
雁などが連なっているのが、たいそう小さく見えるのは、とても趣がある。
枕草子
いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。
それほど高貴な身分ではない人で、きわだって帝の寵愛を受けていらっしゃる方があった。(同格)
源氏物語「桐壺」
清盛公そのころいまだ大納言にておはしけるが、大きに恐れさわがれけり。
清盛公は、そのころまだ大納言でいらっしゃったが、たいそう恐れさわがれた。
平家物語
「の」の識別
識別基本| 連体修飾格 | 接続:体言/訳:〜の/目印:下に体言 |
|---|---|
| 主格 | 接続:体言/訳:〜が/目印:「の」をはさんだ語句が主語になる。「が」に置き換えられる |
| 同格 | 接続:体言/訳:〜で(あって)/目印:「AのB連体形」の形で、AとBが同じものを指す |
| 準体言(体言の代用) | 接続:体言・連体形/訳:〜のもの・〜のこと/目印:「の」の下に体言がなく、「の」で一つの名詞のはたらき |
手順は、①「の」の下に体言があれば連体修飾格、②「が」に置き換えて訳が通れば主格、③下の連体形が上の体言と同じものを指していれば同格(「〜で」)、④「の」の下に名詞がなければ準体言、の順。主格の「の」を含む句は、述語が連体形になって文中に入っていることが多い。
朝夕の宮仕へにつけても、
朝夕の宮仕えにつけても、
源氏物語「桐壺」
九月ばかり、夜一夜降り明かしつる雨の、今朝はやみて、
九月ごろ、一晩中降り明かした雨が、今朝はやんで、
枕草子
母北の方なむ、いにしへの人のよしあるにて、
母の北の方は、昔気質の人で教養のある人であって、
源氏物語「桐壺」
これは六つあれば、別の人のにこそ。
これは六枚あるので、きっと別の人のものであろう。(体言の代用)
沙石集
「と」の識別
識別基本| 格助詞「と」(引用) | 接続:文・語/訳:〜と/目印:下に「言ふ・思ふ・聞く」など |
|---|---|
| 格助詞「と」(結果・共同・資格・比較) | 接続:体言/訳:〜に(なる)・〜と(ともに)・〜として/目印:「Aと」が「なる」「います」などにかかる |
| 接続助詞「と」 | 接続:終止形/訳:〜ても・〜と/目印:動詞の終止形に付く |
| 副詞・形容動詞(タリ活用)の一部 | 「ほのぼのと」「朦朧と」/訳:〜と/目印:「と」を除いても副詞・語幹が残り、「して」が続くこともある |
手順は、①直前の語の品詞を見る(体言か終止形か、副詞的な語か)、②下に「言ふ」などがあれば引用、③動詞の終止形に付くなら接続助詞、④「ほのぼの」「うらうら」のように、「と」を除いても意味のある語が残れば副詞の一部。「朦朧として」のような漢語に付く形は、形容動詞(タリ活用)の連用形語尾。
僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、
僧たちが、宵のつれづれに、「さあ、ぼたもちを作ろう。」と言ったのを、
宇治拾遺物語「児のそら寝」
大家滅びて小家となる。
大きな家が滅びて小さな家になる。(結果)
方丈記
風ふくと枝をはなれて落つまじく
風が吹いても枝を離れて落ちないように
山家集
夜のほのぼのと明くるに、
夜がほのぼのと明けるころに、(副詞の一部)
伊勢物語
雨、朦朧として鳥海の山かくる。
雨がぼんやりとかすんで、鳥海山が隠れる。(形容動詞タリ活用の連用形語尾)
奥の細道
「を」の識別
識別基本| 格助詞「を」 | 接続:体言/訳:〜を/目印:直前が体言で、動作の対象・経過する場所を表す |
|---|---|
| 格助詞「を」(準体言+を) | 接続:連体形/訳:〜のを・〜ものを/目印:直前の連体形の下に体言を補って読める |
| 接続助詞「を」 | 接続:連体形/訳:〜ので・〜のに・〜と/目印:前後の事柄がつながり、多くは逆接・順接。体言を補えない |
| 間投助詞「を」 | 接続:文中の語/訳:訳さない・〜ことよ(強め)/目印:抜いても意味が通る |
手順は、①直前が体言なら格助詞、②連体形に付く場合は、下に体言を補って読めるか試す、③補えず、前後が逆接や順接でつながっていれば接続助詞、④なくても意味が通れば間投助詞、の順。逆接の「〜のに」と訳すものが入試ではよく出る。
翁、竹を取ること久しくなりぬ。
翁が竹を取って暮らすことは、長くなった。
竹取物語
かたじけなき御心ばへの、たぐひなきを頼みにて
もったいない(帝の)お心づかいの、またとないのを頼みにして
源氏物語「桐壺」
八重桜は奈良の都にのみありけるを、このごろぞ世に多くなり侍るなる。
八重桜は奈良の都にだけあったのに、近ごろは世間に多くなっているようです。
徒然草
いかでなほ少しひがごと見つけてをやまむ。
なんとかして、やはり少しでも間違いを見つけて、(それで)やめにしよう。(間投助詞)
枕草子
「にて」の識別
識別| 格助詞「にて」 | 接続:体言/訳:〜で(場所・手段・時)・〜として/目印:「で」と訳せる |
|---|---|
| 断定の助動詞「なり」の連用形「に」+接続助詞「て」 | 接続:体言・連体形/訳:〜であって/目印:「であって」と訳して前後がつながる |
| 形容動詞の連用形「に」+接続助詞「て」 | 接続:語幹/訳:〜で・〜くて/目印:直前が状態を表す語幹(幼げ・あはれ) |
手順は、①「にて」の前の語を見る、②「で(場所・手段)」と訳せれば格助詞、③「であって」と訳せば断定、④直前が語幹(幼げ)なら形容動詞、の順。格助詞の「にて」と断定「に」+「て」は、前に動作を表す語があるか(場所・手段か)、名詞の説明か(〜であって)で分かれる。
この家にて生まれし女子の、
この家で生まれた女の子が、
土佐日記
月の都の人にて、
(私は)月の都の人であって、
竹取物語
声は幼げにて文読みたる、
声は幼い感じで書物を読んでいるのは、
枕草子
「して」の識別
識別| 格助詞「して」 | 接続:体言/訳:〜で・〜によって・〜に命じて・〜と(人数)/目印:直前が体言で、手段・使役の相手を表す |
|---|---|
| 接続助詞「して」 | 接続:連用形(形容詞・形容動詞・打消「ず」の連用形)/訳:〜て・〜で/目印:「ずして」「くして」の形 |
| サ変動詞「す」の連用形「し」+接続助詞「て」 | 訳:〜して/目印:直前が名詞・副詞で、「する」と訳せる |
| 動詞の連用形語尾「し」+接続助詞「て」 | 訳:〜して/目印:「臥し」のように「し」が語尾 |
手順は、①「して」の直前を見る、②体言で手段・相手を表していれば格助詞、③「ず」「く」の直後なら接続助詞、④名詞などの下で「する」と訳せればサ変動詞、⑤「し」までが一つの動詞なら語尾、の順。
長き爪して眼をつかみつぶさむ。
長い爪で目をつかみつぶそう。
竹取物語
行く川の流れは絶えずして、
流れていく川の流れは絶えることがなく、
方丈記
物語などして集まりさぶらふに、
(女房たちが)おしゃべりなどして集まってお控えしていると、(し=サ変動詞)
枕草子
女君は、さながら臥して、
女君は、そのまま横になって、(臥し=四段動詞の連用形)
源氏物語
「せ」の識別
識別| サ変動詞「す」の未然形 | 接続:名詞などの下/訳:〜する/目印:「〜せ+ず・む・ば」 |
|---|---|
| 使役・尊敬の助動詞「す」の未然形・連用形 | 接続:四段・ナ変・ラ変の未然形(a段)/訳:〜せる・〜なさる/目印:直前がa段 |
| 過去の助動詞「き」の未然形「せ」 | 接続:連用形/訳:〜た(仮定)/目印:「せば〜まし」の形 |
手順は、①直前が名詞ならサ変動詞、②直前がa段の動詞なら助動詞「す」、③「せば」の形で、下に「まし」があれば過去の助動詞「き」の未然形(反実仮想)、の順。
いざ、かいもちひせむ。
さあ、ぼたもちを作ろう。(サ変動詞)
宇治拾遺物語「児のそら寝」
世の中に絶えて桜のなかりせば
この世にもし桜がまったくなかったならば(過去の助動詞「き」の未然形)
古今集
高き木に登せて梢を切らせしに、
高い木に登らせて梢を切らせた時に、(使役の助動詞「す」の連用形)
徒然草
「しか」の識別
識別| 副詞「しか」 | 訳:そのように・そう/目印:下に動詞が続く連用修飾 |
|---|---|
| ラ変動詞「しかり」の一部 | 「しかる」+べからず など/訳:そうである/目印:「然り」の活用 |
| 過去の助動詞「き」の已然形「しか」 | 接続:連用形/訳:〜た/目印:「しかば」「しかど」、「こそ〜しか」 |
| 願望の終助詞「てしか」「にしか」 | 接続:連用形/訳:〜たい/目印:文末の「てしかな」 |
| 副助詞「し」+係助詞「か」 | 訳:どうして〜か/目印:疑問詞(何・いかに)の下の「しか」 |
手順は、①直前が連用形かを見る、②「しか」の下に「ば・ど・と」が付くか、「こそ」の結びになっているか(過去の助動詞)、③文末の「てしか」なら願望、④何・疑問語の下なら「し」+「か」、⑤どれでもなく、後ろの動詞を修飾していれば副詞、の順。
しか言はむと思ひける心ばせ、
そう言おうと思った心遣い、(副詞)
今昔物語集
国にてにはかにうせにしかば、
(土佐の)国で急に亡くなったので、(過去の助動詞「き」の已然形)
土佐日記
ありしこそ、あはれなりしか。
あったことが、感慨深かった。(こそ+き[已然形])
徒然草
朝なさなあがる雲雀になりてしか
毎朝毎朝あがる雲雀になりたい。(願望の終助詞)
万葉集
「たり」の識別
識別| 完了・存続の助動詞「たり」 | 接続:連用形/訳:〜た・〜ている/目印:直前が連用形 |
|---|---|
| 断定の助動詞「たり」 | 接続:体言/訳:〜である・〜として/目印:直前が体言(主に漢文訓読調) |
| 形容動詞(タリ活用)の活用語尾 | 接続:語幹(多く漢語)/訳:〜としている/目印:「茫々たり」「堂々たり」 |
手順は、①直前の語の品詞を見る、②連用形なら完了・存続、③体言(官名など)なら断定、④漢語の語幹なら形容動詞(タリ活用)、の順。
くらもちの皇子おはしたり。
くらもちの皇子がいらっしゃった。
竹取物語
忠盛、備前の守たりし時、
忠盛が、備前の守であった時、
平家物語
岸打つ波も茫々たり。
岸に打ち寄せる波も茫々と音をたてている。
平家物語
「て」の識別
識別| 完了の助動詞「つ」の未然形・連用形「て」 | 接続:連用形/訳:〜た・〜てしまう・きっと〜/目印:下に「き・けり・けむ・む・まし」など助動詞が続く |
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| 接続助詞「て」 | 接続:連用形/訳:〜て・〜ので・〜のに/目印:下に動詞・形容詞など用言が続く |
手順は、①「て」の下に助動詞(き・けり・けむ・む・まし)が続くか、②続けば完了の「つ」、③用言が続いて文が先へ進むなら接続助詞、の順。「てけり」「てむ」の形は完了「つ」。
鬼はや一口に食ひてけり。
鬼はたちまち一口で(女を)食ってしまった。(完了「つ」)
伊勢物語
行き行きて、駿河の国にいたりぬ。
どんどん行って、駿河の国に着いた。(接続助詞)
伊勢物語