『先従隗始(先ず隗より始めよ)②』書き下し文・現代語訳・意味・解説|テスト予想問題付き

目次
  1. 書き下し文・現代語訳・解説
  2. 千里馬の話は何をたとえている?
  3. 故事成語「先ず隗より始めよ」の意味
  4. テスト予想問題

→『先従隗始(先ず隗より始めよ)①』はこちら

郭隗が「千里の馬」のたとえ話を使って、昭王に「まず自分を厚遇してください」と説く場面を扱います。

前半の内容

斉に敗れて弱体化した燕を立て直すため、昭王は賢者を集めようとして郭隗に相談しました。ここから郭隗が、どうすれば本当に優れた人材が集まるのかを説明します。

書き下し文・現代語訳・解説

隗曰、「古之君有以千金使涓人求千里馬者。買死馬骨五百金而返。

隗曰くわいいはく、「古の君に千金を以つて涓人けんじんをして千里の馬を求めしむる者有り。死馬の骨を五百金に買ひて返る。

郭隗が言うことには、「昔、ある国の君主で、涓人に千金を持たせて、一日に千里を走る名馬を買いに行かせた者がいました。ところが涓人は、死んだ馬の骨を五百金で買って帰ってきました。

・涓人…君主のそばで雑用などをする人。

・千里馬…一日に千里を走る名馬。

使A B「AをしてBしむ」

意味:AにBさせる。

ここでは、A=涓人、B=千里の馬を求める。

君怒。涓人曰、『死馬且買之、況生者乎。馬今至矣。』

君怒る。涓人曰はく、『死馬すら且かつ之を買ふ。況いはんや生ける者をや。馬今に至らん。』と。

君主は怒った。涓人が言うことには、「死んだ馬でさえ買ったのです。まして生きている馬ならなおさらでしょう。千里の馬は、まもなくやって来るでしょう。」と。

○君主が怒ったのは、千里馬を買うために渡した大金を使って、涓人が死んだ馬の骨を高い値段で買って帰ってきたから。

A且B、況C乎。「Aすら且つB。況んやCをや。」

意味:AでさえBである。ましてCならなおさらBである。

可能性の低いAでさえBなのだから、可能性の高いCならなおさらBであるはずだ、という抑揚の形。

ここでは、死んだ馬でさえ高い金で買ったのだから、生きた千里馬ならなおさら高い金で買うだろう、と世間の人々に思わせることが狙いです。

・矣…置き字。文末で断定・詠嘆などの語気を表す。

不期年、千里馬至者三。

期年きねんならずして、千里の馬至る者三あり。

まる一年もたたないうちに、千里の馬が三頭やって来た。

・期年…まる一年。

「古之君有以千金~千里馬至者三」までが、郭隗による千里馬のたとえ話。この馬の話を、人材を集める方法に置き換えて説明していきます。

千里馬の話は何をたとえている?

千里馬…優れた賢者のたとえ。

死馬…郭隗自身のたとえ。

まず郭隗ほどの人物を厚く待遇すれば、それを聞いたもっと優れた賢者が、「郭隗でさえこれほど大切にされるなら、自分ならさらに厚く遇されるだろう」と考え、燕に集まってくるという理屈です。

今、王必欲致士、先従隗始。況賢於隗者、豈遠千里哉。」

今、王必ず士を致いたさんと欲せば、先まづ隗より始めよ。況んや隗より賢なる者、豈あに千里を遠しとせんや。」と。

今、王がどうしても賢者を招き寄せたいとお考えならば、まずこの郭隗から始めなさい。まして郭隗より優れた人物は、どうして千里の道のりを遠いと思うでしょうか。いや、遠いと思わずにやって来るでしょう。」と。

・欲~…~しようと思う、~したいと思う。

・先…「まヅ」。

・従A…「Aよリ」。

A於B…比較「BよりA」

「賢於隗」は、「隗より賢なり」=郭隗より優れているという意味。

豈~哉…反語「豈に~んや」=どうして~だろうか、いや~ない。

郭隗の主張

死んだ千里馬の骨を大金で買ったところ、それを聞いた人々が「生きた千里馬ならもっと高く買ってくれるはずだ」と考え、実際に千里馬が集まってきました。

同じように、まず郭隗を厚く待遇すれば、郭隗より優れた賢者たちは「自分ならもっと厚く扱われるだろう」と考え、遠い道のりでも燕へやって来るだろう、ということです。

於是昭王為隗改築宮、師事之。

是ここに於おいて昭王、隗の為に改めて宮を築き、之に師事す。

そこで昭王は郭隗のために新たに邸宅を建て、郭隗を先生として仕えた。

・於是…「是ここに於いて」=そこで。

・師事…その人を先生として仕え、教えを受けること。

於是士争趨燕。

是に於いて士、争ひて燕に趨おもむく。

そこで賢者たちは先を争って燕に駆けつけた。

○郭隗の言ったとおり、昭王が郭隗を厚く待遇すると、それを聞いた優れた人物たちが燕に集まってきた。

「於是士争趨燕」となった理由

郭隗が昭王から厚く待遇されていることを知った賢者たちが、郭隗より優れた自分なら、さらに厚く待遇されるだろうと考えたから。

故事成語「先ず隗より始めよ」の意味

先ず隗より始めよ=大きなことを成し遂げようとするなら、まず身近なところから始めよ。

転じて、物事はまず自分自身から着手せよという意味でも用いられます。

テスト予想問題

問1 是」の読みを答えよ。
答 於是=ここにおいて。
問2 「不期年」「於是」の意味を答えよ。
答 不期年=まる一年もたたないうちに。於是=そこで。
問3 「死馬且買之、況生者乎」を書き下し、現代語訳せよ。
答 書き下し:死馬すら且つ之を買ふ、況んや生ける者をや。
現代語訳:死んだ馬でさえ買ったのだ。まして生きている馬ならなおさらである。
問4 「況賢於隗者、豈遠千里哉」を書き下し、現代語訳せよ。
答 書き下し:況んや隗より賢なる者、豈に千里を遠しとせんや。
現代語訳:まして郭隗より優れた人物は、どうして千里の道を遠いと思うでしょうか。いや、遠いと思わずにやって来るでしょう。
問5 「千里馬」と「死馬」は、それぞれ何をたとえているか。
答 千里馬=優れた賢者。死馬=郭隗。
問6 「豈遠千里哉」は、どのようなことを述べているか。
答 郭隗より優れた賢者なら、千里という遠い道のりも遠いと思わずに燕へやって来るだろうということ。
問7 「於是士争趨燕」となったのはなぜか。
答 郭隗が昭王から厚遇されていると聞いた賢者たちが、より優れた自分ならもっと厚く待遇されると期待したから。
問8 「先ず隗より始めよ」は現在どのような意味で用いられるか。
答 大きなことを成し遂げるには、まず身近なところから始めよ。転じて、物事はまず自分自身から着手せよ、という意味。